ねこあつめのレア猫について

ストレスに塗れた現代社会に一筋の光を差し込んだアプリ――ねこあつめについて話をします。 ねこあつめとは、とある一軒家の庭先に餌や遊び道具を置き、そこに集まる猫達を眺めてひたすら癒やされる、というインド人もビックリするほど簡単なゲームです。 か…

群青日和

家は細胞に似ている。屋上の縁に腰掛けながら、彼女は思う。 いつも白衣を身にまとっている先生から聞いたことがあった。人の細胞には寿命があり、役割を終えると死に絶えて、新しい細胞として再生するそうだ。建造物も同様に、一定の周期で取り壊され、新し…

三語小説(細菌・ヤンデレ・節電)

※この小説はフォロワーさんから頂いたキーワード3つを元にして作られたものです。 ライオンやチーターにとって大切なのは、獲物の肉そのものよりも内臓なのだと聞いたことがある。ビタミンやミネラルが豊富だし、未消化のままの食物繊維も摂取できるからだ。…

夏の思い出

※この小説は半分事実、半分虚構のファクションになっています。 これは、僕が小学五年生の夏休みに幼なじみと体験した、とても些細な出来事に関する記録である。 *** 電車を二回乗り継ぎ、荷物を搭載したレンタカーに乗った。目的地のキャンプ場までは十…

Nico Magic!(メドレー)についての雑記

【ニコニコ動画】【メドレー】Nico Magic! 放置しすぎて画面の隅に蜘蛛の巣が張るブログを持つ者、エビフライダーです。 普段は文章を書き殴るための、チラシの裏のような機能を果たしてしているこのブログですが、先日、ニコニコ動画にニコニコメドレーを投…

無題

浪人時代に書いた文章(未完)が発掘されたので、備忘録として載せます。 先生、クラス日誌を持ってきました。 お、サンキュー。どうだ、クラスの雰囲気は? はい、みんな『いい人たち』です。友達も、できました。 そうか、なら良かった。新しい土地で色々…

屍食品

「遅いよ、だいちゃん」と言って、伊藤悠奈(いとうゆうな)は歩き出した。ふてくされた表情をしているが、口の両端にからかいの笑みが刻まれている。本心から腹を立てているわけではないらしく、僕はほっとした。 だいちゃん、というのは僕の名前をもじって…

夜の短編喫茶その3

『最終電車に揺られて』(テーマ:終電) 「おばけ電車の話、ですか?」 「そうなんだよ、わたしの三味線教室仲間のなかで専らの噂になっていてねえ、もう気味悪くて仕方ないよ」 「へえ、それはどんな噂なんですか?」 「なんでも、その電車は終電が去った…

夜の短編喫茶その2

『赤い絲』(テーマ:糸) 学校帰りに何気なく普段とは違う道を歩いていたら、見慣れないコンビニを見かけた。こんなところにコンビニがあるなんて知らなかった。渡河麗(とかれ)はユニークな店名と、欧風でファンシーな外観にひかれて、そのコンビニに入っ…

夜の短編喫茶その1

『ベストショット』(テーマ:卒業写真) 部屋の片付けをしていると、収納棚から懐かしいものがでてきた。それは中学校の卒業アルバムだった。 作業の手を止めてページをめくっていると、一枚の写真が滑り落ちた。拾い上げてみると、そこには古めかしい体育…

夜の短編喫茶~はじめに~

現在、Google+で「夜の短編喫茶」いう企画が開催されています。 夜の短編喫茶とは、提示されたテーマに沿って皆で自由に短編を書き、披露しあう催しです。 ここでは、私が夜の短編喫茶に投稿した拙作に多少修正を加えたものをまとめて載せています。 一つの…

スイートドロップ

まだ目を開けちゃダメなのかなぁと思いながら、私は誰もいない教室で美術館に展示された造形物のように椅子に座っていた。左手に握ったスイートピーの花束の甘い匂いが鼻腔をくすぐる。身体の内側から沸々と湧いて、口から飛び出してしまいそうな焦燥感と不…

灰色に咲く花

昔々、生物が死に絶えて荒廃した世界に、唯一の生き残りである男がいた。 男は瓦礫の上をあてもなく歩いて、助けを求めた。 おーい、誰かいないのか。いたら返事をしてくれ。 喉を絞りきるような声は、倒壊したビルの残骸に吸い込まれて消えてしまった。 汚…